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2005 とうかさん 「ゆかたできん祭」

 三百八十余年の歴史を誇る「とうか大明神」の夏祭りは、別名「ゆかたの着始め祭り」としても有名で、住吉神社祭り、えびす講と並ぶ広島を代表するお祭りのひとつとして広く親しまれています。この日を境に広島の街では艶やかなゆかた姿の女性が目につくようになります。
 以前は旧暦の端午の節句に行われていましたが、昭和30年からは「とうか」にちなんで6月の9・10日に、昭和36年からは8・9・10の三日間行われていました。平成10年からは人の出を考慮して6月の第1金曜日から3日間に変わりました。
 祭りが繰り広げられる中央通り一帯は、毎年45万人もの人出で賑います。中央通りでは午後7時から1時間にわたって、伝統の盆踊りパレードが行われます。とうか山音頭のほか新しい踊りが市内各団体によって賑やかに踊られます。今年は「よさこいソーラン」なども披露されていました。
 また境内を参拝に訪れる人は実に8万人という、まさに広島の夏を代表するお祭りなのです。
 「とうかさん」とは 広島市中区三川町、円隆寺(えんりゅうじ)の境内に祭られる稲荷大明神(とうかだいみょうじん)のことです。古来より庶民の間で、親しみと崇敬から「とうかさん」と呼ばれるようになったのだそうです。(「いなり」とは読まないんですよ。音読みで「とうか」と読んだのが名前の由来です)。

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 それでは、なぜこの日からゆかたを着るのか、いくつかの説をご紹介しましょう。
 その1:戦前の円隆寺は現在地に、何と1600坪もの寺領を有していました(寺の西側、中央通りは寺領の一部だったのです) 祭りの日には境内に見世物小屋が立ち並び、やぐらが組まれ、ここで盛大な盆踊りがありました。その昔は元禄花見踊りなど、浴衣がけの参拝者が自由に入って踊っていたのです。その踊りの衣装として「ゆかた」が広まったとする説があります。
 その2:一般的にゆかたの出番は7月から8月といったところですが、広島では6月にゆかたを着てもおかしくありません。なぜならば6月の広島の平均気温は24度〜28度と高い上に、梅雨にも入り湿度もぐっと高くなるのです。そこで涼しくて過ごしやすい「ゆかた」となるわけですね。今では普段の生活にゆかたを着る事は滅多にありませんが、冷房のなかったその昔は、この時期からゆかたを着て涼しく過ごしていたのでしょう。
 季節の最先端を行くのはファッション界で「ゆかた」もしかり。新作ゆかた商戦も、全国で一番早いゆかた祭り「とうかさん」の時がその年のデザインや柄を決定する重要な時期でもあり、業界の市場調査の大きな目安となっているのだそうです。