研究発表−2
 
 ここでは、1998年と1999年に安佐医学会で発表させていただいた時の発表原稿を、そのまま載せてあります。お役に立つかどうか分かりませんが、よろしかったらご覧ください。なお著作権は当方にございますので無断転機はご遠慮ください。

「デイ・ケアにおける音楽療法 第2報」
〜1年間の経過と変化〜

第11回(1999年) 安佐医学会で発表

研究発表(1)の1年後の追加報告です
 
スライド1 昨年のビデオセッションで「デイケアでの音楽療法導入」について実際のセッションの様子の発表をしましたが、今回は第2報としてクライアントの臨床的な変化やセッション形態の変化などこの1年間の経過を発表します。
スライド2
スライド3 まず、臨床的な効果の検討を、アンケート調査と長谷川式簡易痴呆スケール(以下HDS−Rといいます)を行い分析してみました。
 調査の対象者は、軽度から重度までの痴呆のある人17名。内、男性は4人です。HDS−Rの平均点は17.1ポイントでした。平均年齢は84.8才で、セッションへの参加期間は半年から2年以上と様々です。
スライド4 アンケートとHDS−Rを比較検討し、音楽療法による変化の有無と、その変化の持続時間について検討してみました。
 アンケートの項目は、表の右半分に記してあり、数字は集計結果です。左半分は項目を社会面・身体面・心理面などで分類したものです。話す・笑う・物に触るなどの社会行動の増加と元気そう・明るい・楽しそうなど音楽による自己表現で満足感を得ていることが分かります。逆に日付や場所、相手の確認など見当識は全然改善されていないようです。
スライド5 これは今の表の分類結果をグラフにしたものです。社会面・心理面での変化が多かったことがうかがえます。
スライド6 次に、これらの変化がどの程度持続したかをグラフにしてみました。
 変化のあった項目の合計45例中、セッション当日だけ効果が持続したものが26例と約60%をしめています。2から7日持続したものが13例、ずっと持続、すなわち改善されたものが6例ありました。社会行動は結構持続性がいいようですが、身体機能や集中力・協調性はあまり持続しないようです。効果が1週間以内にほとんど消えてしまうことからセッションは1週間に一度程度が望ましいと考えられます。
スライド7 次に変化の有無と痴呆との関係を調べてみました。
 音楽療法により、特に変化の無かった人は、HDS−Rでもほとんど変化を認められなかったのに対し、何らかの変化があった人は、HDS−Rでも得点が向上していて、音楽療法によって痴呆が改善されていることが分かります。
 臨床所見の検討は以上です。

スライド8  次に参加人数などの変化とプログラムについての考察です。
 A・B二つの施設でセッションを行っているのですが、双方とも参加人数に大きな変化はありません。ただこの1年で少し重度の方が減る傾向にありました。おそらく下に書いてあることが原因だと思われます。
スライド9  理解力のある人が増えてくるに従い、プログラムも少しずつ変化させていきました。
 体操では、複雑な動きや早い動きを取り入れたり、音楽を使ったゲームでは、見る・理解する・考える・表現するなど色々な要素を含んだものを取り入れています。楽器演奏では全員が同じ事をするのではなく、グループ分けをし、別々のパターンで演奏するなどの工夫をしています。
 これにより、身体機能や大脳機能の改善促進が期待できますが、ここで注意しなければいけない点として、複雑にするあまりに、参加できない人が出ないように、そのためには、難しくなりすぎないようにする事です 全員がそれぞれ存在感を持ってセッションに参加しているという事が大切だと思います。
スライド10  次に、セッションを行う上で起こった、音量についての問題ですが、これはどこの施設でも抱えている共通の悩みだと思います。
 施設Aには、音楽療法専用の閉鎖された部屋があります。そのため少々大きな音量でも何も問題はないのですが、施設Bでは仕切りのないオープンフロアーの一角でセッションを行うため、同時に行う他のプログラムの邪魔になるので音量を落として欲しいとの要望が出ました。
 拡声器を使うことで耳の遠い人や、痴呆により集中力を欠く人への効果があるので残念でしたが、共存するためには音量を下げるしかありませんでした。
 また専用の部屋でセッションすることで、参加者自体の集中力も維持でき徘徊を抑制することもできます。下に書いてありますように、効果を上げるためには、専用の部屋を確保できればいいんでしょうが、現実は厳しいようです。
スライド11  それでは本日のまとめに入ります。
 何でもそうですが、継続は力なりで音楽療法も継続することでわずかずつでも効果が上がっているようです。
 セッションにより社会行動の増加と、自己表現による満足感に変化が見られましたェ、見当識は改善されませんでした。
 効果は一時的で持続性には欠けるようです。
 何らかの変化があった人は痴呆も改善される傾向にあり、音楽療法の有効性が実証されました。
 参加者によりプログラムを工夫することで、より一層の効果を期待することができます。
 セッションの場所は専用のスペースを必要とします。
 あるスタッフの感想に「痴呆の方にとっては、その時その時が大切で音楽療法があったことは忘れても、楽しかった感情は必ず残っていると確信します。セッション後の穏やかな満足した表情が、何よりもそれを物語っているからです」と言う言葉がありました。全くその通りで、技術に走りすぎないで、そのひとときを一緒に楽しみ、満足してもらうということを常に念頭に置いてセッションを続けていきたいと思っています。

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