音楽療法事始め

KiPiOが音楽療法を始めた訳 
〜音楽療法を担当した施設の機関誌に投稿した原稿より〜

 1997年4月より当デイケアで芸術療法の新しい分野として「音楽療法」が取り入れられ、私たち夫婦が担当させていただくことになりました。初めてこのお話をうかがったときは正直いって戸惑いました。何しろ今まで「音楽療法」という言葉をほとんど耳にしたことがなかったのですから…。しかし長い間「医療」と「音楽」に携わってきた私は「ああ、趣味でやっている音楽を治療的に用いて何かすればいいんだろう」と簡単に考え「やらせていただきます」と引き受けさせていただいた次第です。
 文献を読んでみますと
音楽療法とは「身体的ばかりでなく、心理的にも、社会的にもよりよい状態の回復、維持、改善などの目的のために、治療者が音楽を意図的に使用すること」
(1996年6月、全日本音楽療法連盟発表の暫定的な定義)と書いてあり、私が安易に考えたものと大差ない事がわかり、これならば肩を張らずにやっていけそうだな、と一安心しました。
 今まで当デイケアで行われている様々なプログラムはその多くがすでに音楽療法に通じています。毎日有線から流れるBGM、リハビリやレクリエーションで使われている音楽、コーラス、民謡、カラオケ、にこにこ体操、阿波踊り、演奏会に至るまで本当にたくさんの音楽に触れる機会が与えられていて、これらは確実にメンバーの人達が生きるためのエッセンスになっているのです。音楽が嫌いという人はまずいません。かなり進行した痴呆の方でも歌は歌えますし、歌えない人でもリズムを刻むことはできます。音楽を聞けば表情が豊かになり、心身活動が活発になる様子を見ることができます。それで十分なのです。私たちは音楽の持っている不思議な力を理屈抜きに利用していたのです。
 高齢者に対する音楽療法の目標は一言でいえば「人間らしく生きる質=QOLを高める」ことです。音楽療法を受けることで
 (1) 心身を活性化して老化を防止する
 (2) 音楽活動に参加する事により、高齢者が孤独に陥って痴呆症状が現われてくるのを防ぐ
 (3) 音楽参加のため身体を動かすことにより、寝たきりにならないようにする
 (4) 不幸にして痴呆になった場合でも、その進行をできるだけ食い止めるなどの効果が期待できます。
 「音楽療法」だからといって特に変わったことをするのではなく、今まで行ってきたことを土台にして、理論に基づきながら効率的に音楽を利用し、メンバーの人達を少しの間でも幸せな気持ちにさせてあげることが私たちに与えられた「音楽療法」なのではないかと思います。
 何でもそうですが、やればやるほどその奥の深さが身に染みてくるものですが、それを恐れずに、逆に楽しみながら一歩ずつ「音楽療法」を進めて行きたいと思っています。これは私たち夫婦だけでできることではありません。スタッフの方や家族の方など多くの人の協力の中で取り組んでいけば、きっと素晴しい効果を得ることができるでしょう。



 動機はさまざまだと思います。今はまだ音楽療法は国家資格ではありませんが、近いうちに国家資格になると思います。国家資格になれば診療報酬を請求できるようになります。それだけ高度な知識や技術も必要となります。
 これから音楽療法士を目指したい方に一言
・まず、人間が好きである事
・基本的な人間としての資質を備えていること(道徳・礼儀・優しさ等)
・なんでも工夫することが好きである事
・何か一つ楽器の演奏ができる事
・移調・即興演奏ができる事
・話し上手である事
などが条件かと思います。もちろん最初から全部を備えている必要はありません。ただ、仕事が無いから「音楽療法でもやってみようか、」などどいう「でも動機」だけは起こさないでくださいね。そんな療法士に当たった患者さんは不幸ですからね。
 これは医療にかかわる全ての人に言いたい事です。
 

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